こんにちは。
相続相談サポートセンター縁の山田です。
今回は、ご相談いただいた内容をケーススタディとしてシェアさせていただきたいと思います。
(内容はプライバシー保護のため、仮称・変更をくわえております)
今回のご相談者様は、末期がんを患っておられる方でした。
この方は、奥様を早くに亡くされ、お子様は息子様が3名いらっしゃって、みんな独立しておられるそうです。
この数年間、長男から療養看護や介護を受けたので、次男や三男よりも自分の遺産をできる限り多く与えたいとのご相談でした。
この方が、もし、何の対策も講じなければ、仮に相続が発生したときに、法定相続分どおりに等分された遺産分割となる可能性が大きいのです。
この点、確かに、民法上は親の療養看護や介護等をした場合、寄与分(民法904条の2)によって法定相続分への加算が認められてはいます。
しかし、条文の文言からは「財産の維持又は増加」を伴う『特別の』寄与であることが求められており、
⚠ 単に療養看護をしただけでは認められない
⚠ いざ紛争になった場合には、どの程度の療養看護や介護等をし、かつそれに伴う支出をしたのかという点について立証等が大変な手間を要する
⚠ 徹底的に争う場合には、家庭裁判所での調停から審判、裁判と続き、何年にもわたって紛争が継続する場合もある
など、デメリットは挙げていけばキリがありません。
そこで、今回は、ご相談者様に、負担付死因贈与(民法553条、民法554条)を用いることを提案しました。
今回の場合に当てはめると、親(ご相談者様)が亡くなるまで療養看護、扶養及び財産管理等をしてもらうという「負担」を長男様が負うことを条件に、親が亡くなったときに一定の財産を贈与するという方法です。
負担付死因贈与による場合は、贈与を受けたプラス財産の価額から負担の価額を控除した額が、遺留分侵害額の請求の対象となるため(民法1045条)、単純に長男様へプラス財産を渡すという内容の遺言を残すよりも、長男様に有利になり得ます。
例えば、上述した事例と同じように、長男、次男、三男のみが相続人である場合に、遺産の総額6000万円・負担の価額が3000万円と評価されたと仮定しましょう。
この場合、負担付死因贈与を用いて、全財産を長男様へ贈与したとしたら、次男と三男が行使できる遺留分侵害額の請求の金額は、500万円ずつ({6000万円-3000万円}×6分の1)になります。
他方で、全財産を長男に相続させるとの遺言を残した場合であれば、次男と三男が行使できる遺留分侵害額の請求の金額は、1000万円ずつになります。
また、親としても、子が「負担」を履行することで受けられる経済的メリットを具体的・明確にして提案することができる、というメリットもあります。
遺言書や家族信託の組み合わせも有用ですが、負担付死因贈与も選択肢に入れられることをお勧めします。
老後のライフプランを立てる際は、必ず専門家にご相談されることをお勧めします。
弊社では様々なケースにたいして、きめ細やかな相続相談を承っております。
初回相談無料の窓口もございますので、どうぞお気軽にご相談ください。